2017年5月15日月曜日

コラム 89  カエル  

長野県の諏訪市内で打合せを終え、八ヶ岳の山中に戻ってきた。夜の山道には人も車も殆ど無い。
何という名のカエルか私にはわからないが、その山道に夥しい数の茶褐色のカエルが点々としている。標高1400メートル付近から始まってしばらく続いたが、ついに車が立ち往生するまでになった。車のライトに照らし出されて輝く姿を眺めながら〝帰りにカエルかぁ・・・・・〟などとつまらぬことを思いつつ、やがてあまりの数に車から降りた。抜き足差し足近づくと〝あなたはどなた?〟といった表情でキョトンとしている。指で触れると、きゅっと身を固くするだけで逃げようともしない。疑いを知らぬ眼だ。

〝あぶないなぁ。こんなところに居たら、みんな轢かれちまうぞ!〟

   それにしても不思議なのだ。ライトの先を見ると十数メートル置きに数十匹は集団でいただろう。長い距離点在しているのだから、打合せて一斉に出てきたとも考えられない。 
   見上げると空は雨上りの満月であった。
ははァ、この月を観るために皆出てきたのだな。見晴らしのいい場所に出てきて、みんなでこの澄み切った満月を眺めていたのだ。


後日この辺の環境に詳しいHさんに、カエルってのは月を見るために出てくるものかと尋ねてみた。
だが、どうもそうと決まったものでもないらしい。
結局カエルの心はカエルに聞かなきゃ判らないってことになったのだが、・・・・・だが待てよ・・・・・雨上りの電柱の灯りにもよく出ているな・・・・・
私はハッと思った。電灯色に替えた街路灯の灯りを、月と見間違えるのかもしれない・・・・・と。 

ところでカエルを踏みつぶしながら山小屋に帰ったのかって?
勿論まわれ右して裏道を帰ったさ。