コラム 4 <蓮の花>
水清ければ魚すまず というが、汚れ過ぎても魚すまず・・・・・人間だっておんなじだ。
泥沼に蓮の花というが、ブツブツ泡立って悪臭を放つようなドブ池に蓮の花は咲かない。
その汚れ過ぎた人もドブ池もみんな人間様がつくり上げたものだ。天に唾し、地に糞をするとはこのことだ。
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仏画師 安達原玄さんのところで咲きかけた蓮の花を戴いた。明日には咲くでしょうとのことであったが、清里から標高1600メートルのところに持って上がったので、三日経ってから美事に花を咲かせた。白くふくよかな大輪を見て、花弁にそっと手をやりながら“ハァ~、きれいだね、きみはすごいねえ・・・” と思わず溜息を吐いた。
見ると、もう一輪は戴いてきた時のままだ。片方だけが誉められてさびし気だ。“君も元気出して!”と言いかけてやめた。少し気の毒に思えたからだ。花にだって色々あるんだ。
大輪を咲かせた方は挿した時には首をうなだれていたのに美事に咲いた。一方は首をシャンと伸ばしていたのに、どういう訳かいまだ蕾を膨らます気配がない。私は柄が少し長過ぎるような気がして10センチ程切ってやった。こんなに長きゃあ水を吸い上げるのも大変だろうと妙なことを思ったのだ。
“君、ゆっくりね。急がなくていいから、咲けそうなら咲こう・・・・・”こう語りかけたが、不思議なことに水切りの途端にうなだれ始めた。急に水を吸い上げて頭が重くなったのだろうか?
蓮の花にはあの柄の長さが必要だったのかもしれない。人間の知恵が裏目に出た恰好だ。