コラム376 <天道虫(てんとうむし)が指し示した本 その①>
過日のコラムに私の転倒に重ねて天道虫について書いた(コラム367)。飛んで行って止っていたのが『ブッダが説いた幸せな生き方』(岩波新書)の背であったことも記した。この本を読み返した中で印象深かったことを二つだけここに転記しておこうと思う。
一つはチベット仏教を代表するダライラマ十四世の言葉である。ユーモラスであり、痛烈である。
〝大きくなった家 小さくなった家族
高まった利便性 なくなったゆとり
増えた薬 損なわれた健康
伸びた利益 薄まった絆
これが私たちの時代だ〟
さらに
〝仏教以上に、私が説く宗教はこれです。
それは単純です。その寺院は心です。
その教義は愛と思いやりです。
その道徳は、誰であれ人を愛せよ、そして尊敬せよ。
俗人であれ、宗教者であれ、この世界で生き延びるためには、
これしか選択肢がありません〟
ダライラマ十四世の写真を見る度に想い出すのが住まい塾賛助会の第二代会長を務められた今は亡き北澤建設会長の北澤一丸さんである。風貌も似ていたし、職人として、人間として、粋な風情の印象深い人であった。