コラム327 <白井晟一の想い出 ⑦> ───明治気質と天才のおかしみ その2───
ある日親和銀行から電話がかかってきた。どうも預金の残高不足の連絡のようだった。親和銀行とは長崎佐世保に本店があり、白井晟一は本店に第一期・二期・三期と十数年がかりで関わり、それ以前にも銀座東京支店、長崎の大波止支店をも手がけている。
電話がかかってきた時、偶然私もリビングに居たからこの話が聞けたのだが、この時の白井晟一の応対がおもしろかった。
〝残高不足?〟
〝君ねえ、君のところとボクとは何年の付き合いだ⁉足りなかったら補充しておきなさい‼〟
脇で私はおかしさをこらえながら聞いていた。どこから補充しろってんだろう。電話をくれた担当者もさぞかし困ったに違いない。こういうところが天才の天才たる所以(ゆえん)であると思われて、おかしかったのである。