コラム310 <漢字に遊ぶ その⑤:察する、擦る>
身体の痛さや辛さ、心や思いなどを「察」する、と云います。それに手を添えると、「擦(さす)」るという字になります。そっと擦る ── これが強い指圧やマッサージより、意外に効果があるのです。思いがこもっているからでしょうか。
小さい時に怪我だの捻挫(ねんざ)だのした時に母がよく〝イタイトコ、イタイトコ、飛んでけ~〟と脚を擦ってくれたのを想い出します。姉達も同じようにしてもらったらしく、先日その想い出話をしたところです。
ほんものの母親の愛情と云うのは他の何にも代えがたいものがあります。完全な形で無償の愛ですから・・・。
住まい塾の活動以前から最も長く付き合ってきた名棟梁・高橋勉さんを、ガンで亡くなる数日前だったか、前日だったか病室に見舞い、骨と皮だけになった足を擦ってやったら、〝気持ちいい・・・〟とにっこり笑ってくれました。何もしてやれなかった私の、せめてものなぐさめとなりました。勉さんも天で〝あれは気持ちよかったよ〟と言ってくれているような気がしています。