コラム307 <仕事とは、人間と人間の関係を創る媒体である>
いつの頃からか、私は自分の仕事というものを〝人間と人間の関係を創る媒体である〟と、そんな風に考えるようになった。これはどこかで読んだり、学んだりして、その影響を受けて得た考えではない。おそらく、どこかで胸に湧いてきた私の思いである。
当然のことながら、人間は一人では生きてゆけない。しかし経済活動中心の現代では、人間が仕事をつくる媒体であって、人間はそれ以上でも以下でもないところまで、貶(おとし)められている。
だから人間関係とは云っても、大方仕事上の利害関係でしか成立しない。それで十分だ、という人もいるかもしれないが、私が思うに、それだけでは人間として実につまらぬことではないか。仕事が機縁になることはあっても、以後仕事を離れても、もっと自由で拡がりのある人間関係を創っていくのでなければ、人生は深まりを見せないだろう。
人間関係の深まりこそが、人生を味わい深いものにしていくのではないか。互いに自分の人生を深めるために他者が要る。他者の人生を深めるために自分が要る・・・そのためにもよき人間関係に恵まれることは殊の外、大切なことに思われる。これには書物などを通じての古(いにしえ)の人との交流も含まれる。
自分の仕事が、こんな人間関係を創る媒体になれればと思う。そのためにも、私は学び続ける。命の見守り役が迎えに来るまで、自分の心を、自分という人間を、育(はぐく)み続ける。