コラム382 <今春最大のショック 続き>
急須を持たない世代となって久しいことは知っている。客間の和室の座卓に、ペットボトルを、それも茶杔にのせてうやうやしく出されたこともあった。定年退職後のご夫妻であったから決して若者ではなかった。この時も〝ハァ~すでにこんな時代になっているんだ!〟と驚きを禁じ得なかった。
翌々日見えたもう一人のヘルパーさんにも上記の話を交えながらソバチョコ・ソメツケの話をした。〝いやぁ、ボクも知りません・・・〟これ以上話し続けると私はショック死しそうだったから、この話はこの日で止めた。
これでは手工芸品の店や、骨董・古美術屋さんが全く売れないと悲鳴を上げるのも当然だ。手工芸家を育てようとがんばってきた東京の老舗『瑞玉(すいぎょく)』の女性オーナーがかつて溜息まじりに言っていたのを想い出した。〝これから工芸家たちはどうやって生きていくんでしょう・・・〟
これは30代の若者であったが、新茶を戴いたので持っていくか?と聞いたら、いやいやいいです、と言う。
〝お茶好きじゃないの?〟
〝いや、急須ないですから・・・〟
〝お茶飲まないの?〟
〝いつもペットボトルですよ。私の世代で急須持っているやつなんてめったにいないと思いますよ〟
緑茶もウーロン茶もペットボトル茶が本来の味だと思われたら茶葉そのものも気の毒なら、うまい茶葉を育てようと頑張っている生産者も気の毒というものだ。これを万事急須という。
TVコマーシャルに惑わされずに、うまい茶をしっかり入れて、気に入った器でちゃんと飲もうよ。日本人なんだから・・・。