2022年9月5日月曜日

コラム285 <便利よりはるかに大切なこと>


  この方が速いって?

  この方が安いって?

  この方が便利だって?


 私が志木市の本部に居た時、岩波新書二冊と文庫本一冊をいつもお願いしている八ヶ岳山麓の今井書店の齊藤さんに電話し、レターパックで送ってくれるよう頼んだ。支払いは郵便振替でね・・・と。

 齊藤さんは長いこと私の担当をしてくれている女性だ。


  アマゾンで買えば、翌日には着くじゃないかって?

  古本で探したほうが、ずっと安いじゃないかって?

  お互い、手間もかからないじゃないかって?


 そんなことは大したことじゃないよ。
 山中にいる時には動けない私のために車で片道30分程かけて、山小屋まで本を届けてくれる。お互い本好きだし、本文化の重要さを思っているから談議も楽しい。単に本の売買いだけの問題じゃない。それを通じて人と人の関係が出来、深まっていく。本を機縁に、いろんな話に花が咲く。だから私は齊藤さんに頼むのが楽しいんだ。私の本が平凡社から出た時も、長いこと平積みにして応援してくれたし、今も在庫を切らさずに置いてくれているようだ。

 そんなにフーハーフーハー言いながら生き急ぐことはない。ゆっくり本を読みながら、ゆっくり語り合いながら、人間らしく生きたいよ。みんな、そうは思わないかい?もっとゆっくりと、深く・・・。