2022年2月7日月曜日

 コラム255 <ブッダの教えの実践>

  学び、知ることだけでなく、学んだことを実践してこそ果があるとは誰でも知っている。このことに関して、少々長くなるが『ブッダが説いた幸せな生き方』(今枝由郎著:岩波新書)からその一部を引用してみたいと思う。 

 第二次世界大戦を終結したサンフランシスコ対日講和会議(1951)で、仏教国セイロン(現在のスリランカ)は、日本に対する損害賠償請求権がありました。ところが、セイロンを代表したJ.Rジャヤワルダナ蔵相(後にスリランカ大統領。19061996)は自発的にそれを放棄しました。その理由として引用したのが(初期仏典)『ダンマパダ』の次のことばです。
 

〝じつにこの世においては、怨(うら)みは怨みによって消えることは、ついにない。怨みは、怨みを捨てることによってこそ消える。これは普遍的真理である。〟

(以上、同219220ページ)

このような心打たれる話を、私は社会科の授業でもこれまで一遍も聞いたことがありませんでしたし、こういう事実こそしっかり教え、伝え、知ってこそ両国の関係並びに人間の心が実践的に美しく、磨かれ鍛えられていくのではないか。私はそう思います。
上記のような事実を知ったならば、日本の政治家も一般国民も若者もそうした歴史を背景に持つ現スリランカへの感謝の基盤の上に親愛の情を深めるに違いなく、少なくとも二国間は学び合い、協力し合いながら現在以上に平和な関係を築き得るはずです。J.Rジャヤワルダナ氏及び彼を支えた人々の素朴で、シンプルな信仰心に感動するのです。