細い枯枝がハシバミの枝の先にぶら下がっている。先月来た時からだから、もう一ヶ月以上にもなる。右の指一本で軽々とつかまって、ふわりふわりと風に揺れ、右に左に回転している。がんばっている風でもなく、どこか楽しげだ。
双眼鏡 Nikon 7×21 7.1°614320 ―― この数字が何を意味しているのか私にはさっぱり判らない。解像力抜群、きわめて高性能だ。最後の数字は製造番号だろう。それ位は私にも判る。
これでおもむろに覗いてみるが、指先がどうなっているのかまではやっぱり判らない。脚立を掛けて、とも思ったがそこまですることもあるまい、無粋なことだと思われ、かつかの枯枝もそんなことは望まないだろうと思われて止めた。
それにしても不思議なのだ。この一ヶ月の間には風の強い日もあっただろうし、雨の日もあったに違いない。それなのにどうして落ちないのか?
私には風まかせ、あなたまかせの、他に委ね切った姿が、次第にこの上なく清々しいものに思われてきた。
私は思わず聞いてみた。
〝いつまでそこにぶら下がっているつもりなの?〟
答えはこうであった。
〝落ちたくなったらね・・・・・〟