コラム 29 <山と運動不足>
山中ではうっかりすると運動不足になる。というと意外に思われるかもしれないが、屋久島の人が東京に来て〝東京は足が疲れる〟というのと同じである。裾野の店まで10キロ以上あるから買い物は致し方ないが、どこに行くにも車だ。郵便を出しに行くにも車、近くの家を訪ねるにも車・・・・・歩いて10分か15分の距離なのに、である。
急な登り坂を数十メートル歩いただけで息が切れる。私は心掛けを改めた。さっぱり歩きもせず、掃除とてめったにやらずに、運動不足だからと室内でストレッチをやったりしている愚かな生活を・・・・・。
そう言われれば、我々が小さい頃、親が室内でストレッチや筋トレなどやっている姿はあまり見たことが無い。ほとんどの家がそうだったのではないか。歩きもしたし、掃除もよくした、させられた。薪割り、餅つき、トンカチやノコギリを持っての大工仕事、冬には雪囲い、道つけ、雪下ろし・・・・・こどもの遊びにも体を使うものが多かった。木登りに川での潜りや水泳ぎ、長~い棒を使っての川飛びや、ア~ア~ア~ッのターザンごっこ、冬にはスキー、スケート・・・・・学校では廊下で相撲を取って先生に叱られ、田圃で草野球をしてはお百姓さんに叱られて・・・・・。どの家の小僧もだいたいこんなものだった。
それ程体を使い、体を動かして日々生活していたのである。親に釣られて子も自然と体を動かしたのである。ケータイゲームも、車もなかったし・・・・・。
いつもなら車でさっと出かけるところを、今日は郵便を出しに山道を歩いた。往復40分
―――山の空気を存分に吸って、実に爽快な気分だ。