コラム414 <動物の死>
40年の半分程を山中で生活を続けてきたから、野性動物の死に度々接してきた。野鳥や野性動物の死を見ていると、苦しみの声もなく静かに目を閉じて、死んでいく。死期を悟るのだろう。あんな死に方をしたいものだと思う。
人間には病院があり、医療・介護というものがあるから、色んな人の世話になり、迷惑をかけながら苦しみを長引かせて、死んでいく。
野性動物達のような死に方はなかなか出来ないが、人間も動物のひとつであれば、あんな死に方ができないはずがない。
野性動物も病で死ぬこともあるだろうが、苦しい苦しいと訴える相手もいない。野鳥は透明ガラスの窓に激突して、首の骨を折って死ぬこともあるし、夜行性の動物は車に撥(は)ねられて死ぬことも多い。害獣(がいじゅう)扱いされて鉄砲や罠(わな)にかかって、死ぬというよりも殺されることも多い。人間という動物の死は最近の世情を見ていると自然死以外には殺戮(りく)が多い。考えてみれば、大昔から同じような繰り返しだ。人類の歴史をたどれば、賢いだけに最も残酷なのは人類だと思えてくる。