コラム442 <ドングリコロコロ>
天然スレートの屋根の上に、ドングリの実が降ってくる。
〝コツン、コロコロ・・・コン(これはウッドデッキに落ちた音です)〟
数日前から水ナラの木からドングリが屋根を伝って落ちてゆく。最後の〝コン〟はうまく転がれば〝ココココココ〟と聞こえたりする。まるでリス達に〝ここ、ここ、ここ〟と伝えている風でもある。
ドングリは夜半の暗い中を落ちてゆく。
翌朝ウッドデッキの上にはその痕跡(こんせき)が残っているが、不思議にも残っているのはほとんどがヘタばかりで、実の方はもうすっかり無い。リスが早朝から懸命に食べて、まもなくやってくる厳しい冬に備え始めているのだろう。ここには植物と動物の自然なつながりがある。
別荘地でも樹々を伐る人が多かった頃、この別荘地では「自然保護協定」を作った。私が住民の会の会長を務めていた頃だ。
ある区画の住民が、敷地内の樹々を皆伐し、それに抗議した道路向かいのAさんに向って
〝私は弁護士だ!法的に何ら問題は無い!〟
と言ったという話をAさんから直接聞かされたのがきっかけだった。
それまで一度も出たことの無かった年に一度の総会に初めて出席して私はこの話をした。
〝自然環境は住民皆の共有財産である。しかるにそういう価値観を持たぬ人間もいて、かくかくしかじかのような事件が起きた。皆伐を規制する法文が無いというだけのことであって、そういう解釈は私に言わせれば法は法でも〝アホウ〟と言う。〟
会場のあちこちから拍手が起こった。そして550区画、地権者約350人程もいるこの規模の別荘地でルールが何もない状態で豊かな自然環境を守れると考えるのは土台無理な話だ。色んな考えの人がいるのだから・・・。と続けた。また拍手があちこちから湧いた。
これがきっかけで私は役員会で、欠席裁判のまま次期会長に推薦され、以来実質5期10年会長を務めた。
自然保護協定の原案も、言い出しっぺだから、と私が作る羽目になった。忙しい日々から解放されようとここに来たはずなのに、一層忙しいことになった。
協定というのは法的な拘束力を持たないから住民の力だけでは弱いと考え、管理会社と共同名義で発表した。以来皆伐は減り、現在ではバランスのとれた間伐を多く目にするようになった。




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