2022年5月9日月曜日

コラム268 <薬について———その①>  
 
 病院にしばらく来れないので、今回は3ヵ月分の薬を処方してもらった。もらってびっくりした。その量の多さと重さに、である。  
 私は年間埼玉県志木市の住まい塾東京本部、信州八ヶ岳の山小屋、それに冬期2ヵ月間は信州上田市山中の鹿教湯(かけゆ)病院にリハビリ入院して大きくは三ヵ所を点々と動くから、主たるかかりつけの病院も三ヵ所ある。  
 病院が変わるのだからその都度医師の判断で薬を変えたり減らしたりしてもよさそうなものだが、どこも4年前に倒れて運ばれた救急病院の最初の処方に、基本的には右へ倣(なら)えの形だ。あまり効果が出ないというのにである。  
 現在処方されているのは、食事や日常の心掛けで補うからこれこれは減らして欲しいとこちらから願い出て減ったもの三種(血圧降下剤、血糖値を下げるインシュリン、それに鬱に対する薬以外はずっと同じである。これは医師の責任放棄ではないかと思うことさえある。  
 
 冬期リハビリをしている病院の最初の主治医は院長が担当して下さったが、ゆったり気楽に話せる先生だったから助かった。前の病院から「糖尿病」の引継ぎ(報告)が為されていたらしく、毎度糖尿食が出てくるので、私は〝インシュリンは疾(と)うに卒業したんですが……〟と言ったら、〝高橋さんは元々糖尿病ではなかったと思いますよ。脳出血を起こしたあとは一時的に血糖値が上がったりするものです〟〝でもまあ糖尿食も普通食も大して変わりませんから(面倒だから……とは言わなかったけれど)そのままにしときましょ……〟こんな調子だった。このインシュリンについても前病院で毎食時顔を合わせる食卓仲間が、〝インシュリンってあまり長く打ってるとよくないらしいよ〟と言ったから願い出て止めてもらったのであって、医師の判断で止めた訳ではない。血圧だってマイタケやシメジをほぼ常食とすることで正常値の範囲を今もずっと保っている。脳卒中を起こした人には鬱になる人が多いという理由だけで抗うつ剤が処方されているが、私の場合は原稿を書いたり、本を読んだり、好きな音楽を聴いたりすることで問題はないと、やめてもらった。テーブルスタンドの電球も白熱球に替えてもらったり、家具のレイアウト替えを手伝ってもらったりして、それだけで入ってくる看護士さん達は〝高橋さんの部屋に来ると、気持ちが落ち着きますねえ。他と同じ部屋とは思えない〟などと言い、夜勤の人などは〝疲れた時、時々寄らせてもらっていいですか?〟という人まで現れて、静かにかかっているジャズバラード談義を短い時間ながら楽しんだりもした。  
 たまにウツウツするのは健康体の人にだってあるだろう。処方された薬の説明リストをもらっても効果の行は一行、副作用の行は五~十行といった按配である。