2022年4月18日月曜日

コラム265 <病と向き合う———その③>

  入院中は勿論のこと、退院後もたびたび注意されるのは〝転倒しないように〟ということだ。しかしこれに対して私は初期から異論があった。
 入院中に転倒して骨折でもされたら、病院の責任問題にもなるし、担当セラピストもその責任を問われて始末書を書かされたりと、対応が大変らしいことは理解できた。それにこんな時代だから裁判沙汰になることもめずらしくないらしい。
 それよりもリハビリ中に骨折したら、せっかく回復途上にあるリハビリは元の木阿弥になるし、転倒しては人間の骨の中で最も大きいとされる大腿骨の骨折が多いと聞く。こうなっては折角積み上げてきたリハビリも一からやり直しになるから、厳重注意とされるのも私にはよく理解できる。
 しかし、一方これでは入院中も挑戦的なリハビリが出来ないし、それに退院後の日常生活において転ぶことなど、いくら注意してもしばしば出てくるだろう。そうした時に転んだこともない、立ち上がり方も判らないではどうしようもない。転倒も経験の内と思って私は入院中リハビリのトレーナー(セラピスト)には、第一にトレーニング中に転んで骨折しても、病院やセラピストの責任など問わないこと、第二に転倒もリハビリの経験の内と私は考える旨をはっきり伝えておいた。そうしなければチャレンジングなリハビリなど出来やしないと思ったからである。
 セラピストの中には私と同意見の人も少なからず居ることも判った。しかし患者の中には私のような考えの者ばかりでなく、何カ月間もリハビリしたが成果が上がらないから金も払わないなどと言い出す者もいて、こんな時代では慎重論が優位に立つのも無理はないと思われた。