2021年11月8日月曜日

 

コラム242 <野鳥にまで励まされ……>

 

十月末、八ヶ岳山中、特に標高1600メートルに位置する私の山小屋周辺は、もう冬だ。同じ別荘地内から来て夕食づくりをしてくれているヘルパーさんが言っていた。今朝はマイナス5度だった、と。

  寒いからと暖房付の室内ばかりにいては健康によくないと、比較的晴れた日にはデッキに出て陽を浴びている。
 しかしそれもせいぜい10分か15分だ。寒くて身体がさらに強張(こわば)ってくるからだ。健康な時にはこんなことはなかったのに……と思いながら、足元から先1メートル程のところに置いた野鳥のエサ台と、鉢の受皿を代用したプラスチック製の水皿を見る。
 エサはすっかり無くなり、水皿のまわりに水が飛び散り、野鳥達が水浴びをしたあとが見える。こんな寒い中でも野鳥達はちゃんと水浴びをするんだ……えらいものだ。 

 二度のコロナウィルスワクチン接種以来、マヒ側の筋肉が一段と硬直して危ない。それに先週の鍼(はり)治療以来この硬直がさらに度を増して、歩くのも辛くなった。加えて寒さが身体を強張らせる。
 入浴を一日一日と日延べしていたが、野鳥達に励まされて入浴を決意。やっとの思いで湯船に浸かり、身体を洗って上がった。筋骨隆々だった身体が、鏡に写った姿はまるで釈迦の断食像を想起させる程あばら骨が浮き出てガリガリだった。80キロあった身体が60キロになり、一時65キロ近くまで戻ったが、今は明らかに60キロ以下だろう。
 それ程極端に食欲がない訳でもないのに、なぜこんなに痩(や)せてしまったのか。癌(がん)に冒されている訳でもない。きっと強烈なシビレから来る痛みと苦しみが、身体のエネルギーを奪い取っているに違いない。中程度の腓(こむら)返りが左マヒ側全体に終日続いている、といえば、いくらか想像がつくだろうか。これが心臓や肺、その他の臓器に負担をかけているのが、自分でも判る。
 しかし静かな思いで辛抱するしかない。いつかピークを迎えるだろう。それまで私の臓器よ、持ち堪(こた)えよ!

 ( 2021.10.31 記す