2021年7月12日月曜日

コラム225 <脳出血から34ヵ月経った者の心境 その③>

  次に期待して訪れたのが東京のとあるシビレ専門のクリニックである。シビレはシビレでも脳から来るシビレとうたってあったから期待したのである。ここでの担当医は女医さんであった。

 〝はっきり申し上げてこれは治りませんから……一発で亡くなる方もいるのですから幸運だったと思って諦めてつき合っていって下さい。〟
       あまりのドライさにポカンと開いた口がしばらく塞(ふさ)がらなかった(今は閉じている)。この先生は治らないものは治らないとはっきり言った方がかえって親切というものだ、と固く信じているようだった。そう信じているというのならそれはそれでいいのだが、あまりにシャーシャーとした言いっぷりに、言われたこちらは何だか〝治りませんから……〟と言われるために志木からわざわざ来たような気分だった。病が判って人間の苦しみが判らぬ純粋医師を見たような思いだった。苦しんでいる人間に寄り添った多少のアドバイス位あってよさそうなものだが、〝治りませんから、つき合っていって下さい〟だけじゃ混んだ電車を乗り継いでやって来た甲斐が無いというものだ。それとももう一度行って〝そのシャーシャーとした言いっぷりは、もう治りませんから……〟とでもいってやろうかなあ。