2021年3月22日月曜日

 コラム209 <今朝の贈り物>

  私の仕事場≪住まい塾≫では東京・大阪本部それぞれで木造の「設計者養成塾」というものをやっている。住まい塾をスタートしてからまもなく、世の中にしっかりした木造の設計者がきわめて少ないか、ほとんどいないに等しいことが判って内部で養成するしかないと踏んで学び合いの場としてスタートしたのである。
 それに住宅、特に木造の勉強をしたいと思っていたのに経済的な理由から、それが叶わず学校に行けなかったというような人もいるに違いないし、大学に入っても木造については一般教養程度にしか教えられないから、木造住宅については的がはずれたと思っている人も少なくない。だが昔から多くの人間が木造の家に接しながら育っているのだから専門領域というよりも、一般常識の領域に入ることも多いから、その気になれば独学でも十分できるようになるし、そばにアドバイスできる人がいれば、木造住宅設計者には十分なれるのである。そんな思いから始めたのである。最初、受講料は無料であったが、無料も良し悪しで、現状は年間4万円頂いている。 

 去る313日(土)朝9時半から今年度最後の養成塾があると聞いていたが、退院してまもない私は体調が悪く、参加できないと思っていた。しかし、遠くからやってくる養成塾生達の情熱を考えると体調が悪いなどとは言っていられないと思い、歯をくいしばって起き上がり、一階に下りた。だが少なくとも一時間前には来ているはずのスタッフ(講師達)が一人もいないし、照明も点いていない。どうしたことかとスケジュール帳を改めてみたら、14日(日)の見まちがいであった。がっかりしたが、そのまま離れの洗面所に向かい、歯をみがき、顔を洗っている間中、冷たい雨の中で野鳥が近くの梢にとまり、ツィーッ、ツィーッ、ツィーッ、チッ、チッ、チッとさえずって、まるで朝のはげましに来てくれたようでうれしかった。私も入り口の扉を開けてオハヨウ!オハヨウ!と繰り返した。思い違いが生んだ寒い朝の贈りものであった。