コラム150 <いい言葉を拾う>
先日、TVで
〝笑顔は副作用のない薬〟
という言葉を拾った。
いい言葉だ。
身体をいためたり、不自由になったりすれば、どうしても思いが重く落ち込んで、場合によっては将来への希望を失って、心が折れそうになる。表情が暗くなり、笑顔が失われるのも無理はない。
上記の言葉は、今はパラリンピックのカヌー選手として活躍している娘が、かつて大怪我をしてヒザから下を切断せざるを得なくなった時に贈った、母親の言葉だという。それは彼女が立ち直るきっかけとなったという。
ひとつの言葉が一人の人生を救う。
右腕を切断したヴァイオリニストも知っている。私が入院している間にも右ヒザから下を切断した30代と思しき青年がいた。テーブルこそ違ったが毎食時すれ違う度に我々はあいさつを交わした。
〝オハヨウ!〟
〝辛いけど、今日も元気でがんばろうね!〟
〝オヤスミナサイ!〟
彼は、苦しみと将来への不安の中にあるのがありありと判ったが、それでも松葉杖をつきながら元気な声であいさつを返してくれた。少しの笑みを浮かべながら……。
えらいと思った。彼の心の中が察せられて、実にえらいと思った。