コラム 54 < 野鳥達
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私の山小屋周辺でよく見かけるのはヒガラ・コガラ・シジュウカラ・ゴジュウカラ・ヤマガラといった5~6種類のカラ類を中心に、ウソ、カワラヒワ、ミソサザイ、それに中型のシメやアカゲラ、カケス、キジバトなどが混じる。
それにしても不思議に思われる。
一組の番(つがい)から巣立つ羽数は、生涯でどれ位になるのだろう。日本人の出生率は1.4などと言っているが、樹上にかけた巣箱で見るかぎり孵ったヒナは(年に一回なのか二回なのかはっきり判らないが)年間5~10羽、少なくとも3年位は続くと仮定しても15~30羽・・・・・即ち出生率は15~30といったことになる。こんな調子で行ったなら山は野鳥達であふれ返るだろうと思われるのに、年々増えていくといった形跡が無い。
巣立ったあのヒナ達はいったいどこに行ってしまったのだろう。それぞれに縄張りがあるから、この辺にはいられないのだと言う人もいる。だが渡り鳥でもない限り生息域は限られているのだから確実に増えてよさそうなものだが、一向にそんな気配は無い。となると何らかの理由で大概は死んで、この15~30羽とした推定が数学的には二羽程しか残っていないということになる。それが辛うじて世代交代しているということなのだろうか。知ってみてどうなるものでもないが、毎年巣づくり・子育ての様子を見る度に思われるのである。
雪解けの頃から樹間にミソサザイのつややかな声が冴え渡る。
巣立ったばかりのちっちゃな子達が5羽も6羽も親に引き連れられて、地面に積まれた枯枝の間を巡り歩いているのを幾度も目にした。
あのまま死なないで生きていたら、山中は今頃あの美しい声で満たされることになっただろう。春先のさえずりからして世代交代はしているようだが、かわいいあの幼鳥達の多くはいったいどこへ消えてしまったのだろう。