2016年6月13日月曜日


コラム 41 <葉を落とすにも力がいる>  

山小屋の玄関前に植えられたソロが昨年頃から葉を落とさなくなった。
十年近く前に植えたものだが標高1600メートルの冬の厳しい寒さにはさすがに耐えられなかったらしく、当初の整った株立ちの樹形が葉の小型化と共に年々小さくなり、ついに株が枯れて残すのは幹一本のみとなった。
それでも毎年春には小さな葉を芽吹かせ、心を和ませてくれた。風にそよぐ姿も可憐でかわいらしかった。 

だが二年程前から細い枝先に小さな枯葉を残すようになった。はて、そんな樹であったかと一瞬思ったが、やはりそうではなかった。今年は昨年の枯葉を残したまま芽吹くことがなかった。 

葉を落とすというのは、次にやってくる新しい生命に押し出されるようにポトリと落ちるのである。新しい生命との代替わりである。秋には紅葉しやがて葉を落とすのは自然のごく当り前の行為だと思っていたが、ソロのこんな姿を見ていると葉を落とすにも力がいるのだと判る。 

地上1メートル程のところに生命の名残りが見える・・・・・
根元に残る新しい生命の息吹き・・・・・この生命の消え切らぬうちにもう少し暖かいところでもう一度生命をよみがえらせてやろうと思った。