コラム 22 <テンのこと>
最初は見つからないようにと、室内の暗いところからじっと眺めていたが一向に現れない。〝そりゃあ夜行性なんだから暗くしたって向こうからは丸見えだよ〟と言われて、そうか、と合点した。
以来カーテンの隙間からそっとのぞいて現れるのを待つことにした。だがそれでもちょっと用を足している間にサッとやられて、残っているのは足跡だけ・・・・・。ある人にこの話をしたら〝それじゃあダメだ。姿を見たきゃあ、エサを細切れにして雪の上にバラまくんだよ〟と教えられた。なるほど、色々な知恵があるものだ。こうして人間の知恵が勝ってテンの姿を幾度か見ることになった。だが、雪ごとパクパクと喰う姿に口の中がさぞかし冷たいだろうと思われ、以来こんなつまらぬことはヤメにした。
さてこのテンのことだが、近くに毎夜エサを・・・・・いや失礼、食事を与えている女性がいる。その人の話によると、夜ほとんど決まった時間に来るのだという。テンだから10時ですか、と聞いたら、それ程正確なものでもないらしい。〝最近はデザートも要求するんですよ〟などと言う。〝デザートだから食後ですか?〟と冗談ながらに言ったら〝そうなんです。ちゃんとお皿に載せて・・・・・〟とケロリとしていた。私が行った時にはそんなもの出もしなかったのに、こちらがうらやむ程の接待ぶりだ。参った!・・・・・だからカウントテンというのか・・・・・などと、バカなことを思った。