2025年12月15日月曜日

 コラム448 < 美しきものの力 > 



 美しい器を目にすると私の体内に気が充満してきます。写真だけでもそうなるのですから、実際に器に触れることができたら、さぞかし元気が出るに違いありません。


 <しぶや黒田陶苑>が時々送って下さる展示会目録。今回は金重有邦(かなしげゆうほう)展の案内でした。本来備前の方なのに今回は珍しく黒高麗(くろこうらい)茶碗10点と唐津土灰釉(からつどはいゆう)茶碗10点の計20点の案内でした。


 私は元々黒楽(くろらく)茶碗よりももっと硬質の黒織部茶碗の方が好きでしたから、目録前半の黒高麗茶碗に一気に魅せられました。眺めていて、長く続いている左半身マヒの苦痛が和らぎました。

 

 人の手によって作られた美しいもの、魅力的なものっていいですね。私が病に倒れていなかったら、即渋谷の<黒田陶苑>まで出掛けて行って、きっとそのひとつでも買い求めたに違いありません。法外なものならばともかく、金が無くとも、その魅力に負けて買うのです。今の時代、世代にはそういうことが殆ど無いそうですね。だから作家が育たない。同時に自分の眼も育たないのです。分割にしてくれと頼み込んで手に入れたものだって私には少なくありません。3年分割で手に入れたものさえある程です。


 〝朋(とも)、遠方より来(きた)る有り、亦(また)楽しからずや。〟


じゃないが、美しいものに出会うと心の朋と出会ったような気分になるのです。身体の苦痛が和らぐというよりも魅せられる神経の方が苦痛の神経回路に勝(まさ)ってしまうのかもしれません。