2016年11月7日月曜日

コラム 62 < 都会の雑踏  


夏の一日、都心に帰った。その日一日だけで、三度見た。
すれ違いざま人と肩がぶつかって、
憮然とした表情で睨みつけていく者、
舌打ちしながら、時には〝バカヤロー!〟と言い放って去っていく者、
つい先頃も〝ナニー、コノヤローッ!〟と言い返されて、ケンカしている者もいた。 

最近少なくなったのが、おだやかに〝ごめんなさい・・・・・〟と振り返る人。
急に増えたのは、スマホ片手に画面から目も離さずに、無反応で通り過ぎてゆく人である。
人間はさまざまなれど、人間社会が平和に向かうのはどんなあり方なのだろう。
あの〝バカヤロー〟と言って去った人も常日頃のうっぷんをそれで晴らしたつもりだったろうが、結果はさらにうっぷんを募らせただけに違いない。 

〝人間いかなる時でも、あるべきようにあれ〟とは、古(いにしえ)からのいましめである。
山中から久々に降りて行った者の眼には、東京の異状進行中がよく見える。
人間崩壊の兆しあり。