2016年10月17日月曜日


コラム 59  大スズメバチ 大発生  

今年はスズメバチの当り年である。
トイレでしゃがんでハチに刺された、という人がいる。おならをした途端にやられたというからおかしい。フタの裏でまどろんででもいたのだろう。本人も驚いただろうが、ハチだってさぞかし驚いたに違いないのだ。 

窓を開けていると大スズメバチが毎日5~6匹は入ってくる。机の上に飛んで来たり、ガラス窓でもがいたりしていると至近距離で言葉を交わすことになる。もう友情を感じる程だ。
近くに来ても何事も無いかのようにゆったりと構えていればどうってことはないし、自然界の仲間のように感じれば、殺気立つこともない。だがこちらが驚いて手で払ったり、大声を上げて騒いだりすれば刺されること必定である。 


これは、対人間においても同じである。養蜂家の中には手袋もせず、網もかぶらずに平気な人がいる。ああいう人は刺されても平気なのだと思っていたが、そうではなくハチの方が刺さないものらしい。(時には刺されますよ、と言ってはいたが、そんな時でも手加減するらしい。)なぜそうなのか?これはきっとハチの心を苛立たせる邪気というものが少ないからなのだろう。この事実には学ぶことが多い。 

〝何もしなければ刺されない〟と聞いていたから何もしなかったのに、刺されたという人が時々いる。私が思うに、表立っては何もしなかったが心の中では大いにしてしまっているのではないか。〝寄って来るんじゃない!〟〝ヒェ~ コワ~イ!〟〝向こうに行け~ッ!〟こんな感情がきっと向こうに伝わるのである。野生動物の邪気を瞬時に感じ取る能力にはきわめて鋭いものがある。手にエサをのせて伸ばせば、リスも野鳥も安心してやって来る人を私は知っている。この人の表情を見ていてもそう思う。悠然と構える者に、この邪気は立たないのである。
  山中での会議中、作務衣の左袖からスズメバチが侵入した。それを見た人が〝あぁ、ハチ ハチ!〟と言ったが、その内背中に回ってモソモソ動いている。私は部屋の外に出て上着を脱いで逃がそうとしたが、その前に右袖から出て行った。こんなものである。