2026年3月2日月曜日

 コラム459 <専門家の陥(おと)し穴> 



 多くの医師は病を看て人を看ない。私の仕事は住宅の仕事だから、住宅を見て人を見ない設計者が殊の外多い。建物への要求ばかりを聞いて、人間あるいは家族を顧(かえり)みなければ、多く失敗する。


 仕事において、この人間を見ない失敗をどれ程多くの専門家がしているだろうか。

 その原因は専門家というものは多く人を見るだけの人間の力量を欠いているからである。必要とさえ思っていないから死ぬまで気づかない。きっと死んでも気が付かないに違いない。それは驕(おご)りの一形式だからである。

 人間としてのやり直しである。人生のやり直しである。


 この時代は多くのモノに恵まれた。カネと科学技術。しかし一方で大きく、深く失ったのはそうした価値観であり、人間観である。まるで注ぐ愛情も鑑識眼も無いままモノを集める美術・古美術・骨董品の蒐集家のように・・・。