2017年12月18日月曜日

コラム 120  山の灯りについて

薄暗く寒い陰気な日など、パッと灯りを点けると気分が明るくなる。温度が上がる訳でもないのに、室温が二・三度上がったような気分になる。
灯り――特に白熱灯の灯りはありがたいものだ。人々の心をこれまでどれ程癒してきたことだろう。 

数年前、別荘地内の街灯を白々とした白色蛍光灯から白熱灯色に換えてもらった。標高1600メートルの山中は盛夏の8月でさえストーブが欲しくなる時がある位だし、初秋の10月から翌春5月までの約8ヶ月間は寒い日が続く。厳冬期の1,2月にはマイナス20度を超える日もめずらしくないから、ここに白色蛍光灯ではいかにも寒いのである。
私は別荘地の会に諮(はか)って40年も続いた白色蛍光管を暖かい色のものに換えてもらおうと提案し、了承された。それ以前に管理人さんに頼んで、試験的に一本の通りを白熱灯色に替えてもらっていたのである。たったこれだけのことで、山中の雰囲気はだいぶ変わって人々の心を和ませた。少し暗い感じがすると言う人もあったが、概(おおむ)ね好評であった。
何せ550区画もある別荘地だから、予算のこともあって一気にという訳にはいかない。こうして数年がかりで寒々とした別荘地の山道に、ほっとする灯りが点々と灯った。住民にも訪れる人々にも、心和むものがあるに違いない。 


国は白熱灯の生産を中止させるという。
選択の自由を奪って愚かな施策を強いたものだが、根強いファンが居る限り白熱灯は社会から消えることはないだろう。だが球があっても、器具がない。反旗を翻す生産者はいないものだろうか。