2016年1月4日月曜日


コラム 18 <寒さ――文明時代と精神性>  

 〝寒いところは湯気が楽しめていいですねえ・・・ 山中の茶室を訪れた人が呟いた。
 寒さは辛いばかりではない。心身共にきりりと引締まる効果は経験したものでなければ理解できないだろう。 

 茶室も今や暖房完備が多いから寒い季節でもしゅんしゅんと煮え立つ湯気が楽しめない。撮影時など湯気を捉えたいと霧吹きでシュッシュッとやる程だという。
 このような場となった茶の湯はおそらく背筋の伸びた精神性をすでに欠いているだろう。精神修養の世界ではなおさらである。冷暖房完備の僧堂などと聞いただけで、そりゃあ駄目だと思う。辛抱して、耐えて、やがて自らの身体が自然の動きに馴染んでいく、一体になっていく―――特別な人を除けばこういう経験なしに精神性が深まる道はないのではないかと思う。 
 

 このことは極端に暖冷房は禁ずべしなどと言っているのではない。少なくとも室温18度では寒いといって20度に、それでも寒いと23度、25度としていくような生活の先に精神世界は開けないと言っているだけのことである。