2017年4月10日月曜日

コラム 84  春のさえずり  

野鳥たちも春の訪れを感じているのだろう。
残雪の中、ミソサザイがけんめいに鳴いている。
里はもう桜の季節だというのに標高1600メートルの私の山小屋周辺の朝夕はいまだ零下に達し、山肌には雪が残る。消えるには4月いっぱいかかるだろう。
雪が融けても、土中深く1メートル程は凍土のままだ。この凍土がゆるむ5月中旬頃から樹々が一斉に芽吹き始めるのだが、それまでの厳しい季節をよくも生き抜くものだと感心させられる。 


そんな自然への讃歌のように、山中にミソサザイの透明な声が冴え渡る。自然は、このミソサザイの美しいさえずりによって長い冬の眠りから目ざめるのではないかと思われる程だ。
見たところ茶褐色のかわいい鳥だ。こんな地味な姿にして、この艶やかな囀り。
「天は二物を与えず」とはよく言ったものだ。この小さな野鳥にも自然界での大きな役割がしっかりと与えられている。