2020年10月26日月曜日


 コラム188 <上から目線①>

  角の立つ言い方というものがある。音が出る訳ではないが、カチンと来る態度がある。簡単に言えば 〝この野郎!〟という感情を引き出してしまう言葉・態度である。    

 辞書で引く言葉の意味からではない。語調、目つき、言葉にのせる感情、表情で、角が立ち、カチンと来るのである。

  礼節などという言葉は、今あまり使われなくなったが、これが大切であると言われるのは言葉そのもの以上に人間関係をよくしていく上に必要とされるものが多々あるからである。「慇懃(いんぎん)無礼」という言葉もあるから、礼節は形式的なことではなく、心にしっかり浸み込ませておく必要がある。

  私の仕事場である<住まい塾>では、一人間として、一仕事人として、あるべきようにあり得ていない時には、年令や先輩・後輩に関係なく、それぞれ率直に指摘し合おうということになっているが、どれ程真剣になされているか、私は心配だ。その前提には素直な心が必要だからである。

  職人達から時々この〝上から目線〟を指摘されるスタッフがいる。本人にその気が無くとも、そう感じさせるのだから何かがあるのだ。当の本人は、驕(おご)り、昂(たか)ぶり、上から目線など大嫌いな人間なのにである。長年つき合ってきた私から見ても、まちがいなく いいやつ なのにである。

 ちょっとしたことなのだ。言葉に乗ってしまうニュアンス・語調がそうさせる時もある。ちょっとした目つきや表情が関係する時もある。人によっては無いものが出る訳がないのだから、心のどこかに問題があるのだよ、と厳しい指摘をする者もいる。まわりにはこの原因が割とよく判る。しかし、本人にだけはそれがどういうことなのか判らないのである。〝自分のことは自分が一番よく知っている〟とよく言われるがこうしてみると〝自分のことを一番知らないのは自分自身である〟とも言えるのである。