2020年10月12日月曜日

 コラム186 <カジノとトバク———その①>

 

 カジノとはイタリア語のcasino:シチリア島で結成された秘密結社が起源と言われる。(『辞林21』より)

  カジノといえば、西洋式にスマートに聞こえるが日本語でいえばトバク(賭博)場である。時代劇やヤクザ映画などでしばしば見かけるサイコロでの〝さあ、はったはった、丁(ちょう)半(はん)〟がルーレットやカード、ダイスなどになっただけのことである。このカジノの日本への誘致が取り沙汰されているが、私にはこれが不思議に思われる。

 これまで長く取り締まってきた側の国が、率先して国をあげて大がかりな賭博場をつくろうとしているのである。トバクも大きくなり過ぎると人間の目に余り、罪としてきたことも娯楽のひとつに見えてくるのだろうか。今でもりっぱに「賭博罪」というものが存在するのに、である。(野球賭博などは我々のよく知るところである)

  私は国を代表する首相が〝日本は長い歴史の中で賭博を良しとした時代を一度も持ったことがありません。ラスベガスがどうあろうとも、他国がどうであろうとも、賭博をよしとする精紳土壌は日本の歴史には無い〟と世界に向けて宣言したら、日本人はどれほど爽快な気分を味わうことだろう。この巨大になった資本主義社会の中で、何をたわけたことを!と言う人間がいてもいいではないか。潮流に巻き込まれていくばかりでなく、独自の国のありようをしっかり持った国になってほしいものである。