2016年7月25日月曜日


コラム 47 <ホトトギスと托卵> 

毎夜ホトトギスが鳴く。名状しがたい鳴き声である。物の本には〝トッキョキョカキョク(特許許可局)〟と鳴くと書いてあるが、何度聞いても私にはそんな風には聞こえない。
親しくしている山の隣人は〝テッペンハゲタカ(てっぺん禿げたか)って鳴くんだよ〟と教えてくれたが〝そんなこと余計なお世話だ!〟と言って笑い合った。
その話をもう一人の野鳥に詳しい隣人に話したら、ハゲたかじゃないよ、〝カケたか〟だよと言う。楽しい山仲間達である。 

あれから5年、私にはいまだに〝キョキョキョキョキョッ〟としか聞こえない。同じ種類のカッコウより二回り程小さいだけで、姿形はよく似ている。それなのにカッコウの方は〝カッコウ、カッコウ〟といたって判りやすい。
ウグイスの   ホー ホケキョ
シジュウカラの ツピ ツピ ツピ
ヒガラの    ツピチ ツピチ ツピチ
など言葉にしやすい野鳥もいるが、30年間聞き続けてなお言葉に表しがたいのが、このホトトギスである。 
 

ついでだが、このホトトギスで気に入らないことがひとつある。それは托卵という行為である。他人の巣に卵を生み落とし、育てるのも他人任せといのだからひどい。日本で見られるカッコウ科の鳥はカッコウやこのホトトギス、ツツドリ、ジュウイチといったものすべてが托卵するらしい。托卵する相手も各々に違っておもしろいが、調べてみると托卵相手の体長は自分の約半分程度の鳥であることがほとんどだ。体積にしたら10倍程も違うだろう。どうしてこんなことになっているのか、なぜこんなことをするのか判らないが、生み落とす卵の色も大きさもよく似ているから、仮親は何の疑いもなく抱卵する。しかし孵化したあとひなはぐんぐん育って巨大になるのだから、仮親は肝をつぶすに違いないのだが、自分の子と信じてせっせと育て上げるのだろう。
気に入らないのはこのことばかりではない。
托卵に来た雌鳥は相手の卵をくわえて抜き取り、その姿のまま産卵するといい、さらに孵化したひなはまだ目も見えないというのに托卵相手の卵を背と足で巣から押し出し、巣と給餌を独り占めする、というのである。(参考:山と渓谷社『野鳥』)
生み落とされた卵(通常1個)は、托卵相手の数個より数日早く孵化するというのだから、何ともおそろしい野生の知恵ではないか。