2025年3月24日月曜日

 コラム418 < 父の想い出と後悔  ②> 


 私が病室に入った時には気丈な父の命ももう最後であると一見して判った。苦しそうに息を吸っても吸っても、肺が固くなっていて吸収しないのだから、苦しかったろうと思う。今思えば苦しんでいる父の手を握って〝もう十分苦しんだのだから、これ以上がんばらなくていいよ〟とでも言ってやったらさぞかし父も安らいだろうに、と思えて、これが父への大きな悔いである。最後のモルヒネを打ってからは、ローソクの火が消えるように父の命もス、ス、ス、ス、ス-ッと消えていった。

 〝修ちゃん(姉達も親戚の人達も私のことを未だにこう呼ぶ)が来るまで父さん待っていたんだぁ〟と言われたその通りの最後であった。未だに写真に手を合わせる時、この時の手を握ってやれなかったことを謝っている。