2020年3月30日月曜日



コラム158 <散歩中に感じたこと②>

 土手の散歩コースには、所々にベンチが置かれている。そのベンチに腰掛けてうなだれている人に声をかけたなら、最初は何も応えてくれないかもしれない。怪訝(けげん)そうな顔をする人さえいる程だ。だが、二度、三度と繰り返している内に、余程のことがない限り、こたえが返ってくる。
 〝おはようございます〟
 〝おはようございます〟
 〝今日は暖かくて、いいですねぇ〟
 〝そうですねぇ〟
 こんな調子だ。そのうち、かすかにほほえみが返ってくる。
 川面に浮かぶ鴨の親子達を眺めながら
 〝みんな仲よくていいですねぇ〟
丘に上って日向ぼっこしている鴨達を見て
 〝鴨達もやはり暖かいところがいいんでしょうねぇ、気持ちよさそうですねぇ……〟
でもいい。ちょっとしたことばのかけ合いが人の心を和ませる。心中を察することなどできないが、その人は自分一人ではないことを感じて、笑みをもらしたのだ。小さなことだが、自主トレを兼ねた散歩道で、こんなことを感じるようになった。
 都会では人と人との関係に多く潤いを欠くようになった。日頃の小さな積み重ねが、いつの間にかそうした状況を生んできてしまったのだ。