2022年9月19日月曜日

 コラム287 <日本三鳴鳥>


 日本三鳴鳥はウグイス、オオルリ、コマドリ、ということになっている。八ヶ岳の渓流沿いに建つ私の山小屋周辺で際立って美しい声で囀るのは、ミソサザイである。日本の野鳥の中で最も小さいといわれる褐色で地味な鳥である。しかし、その声は一際(ひときわ)艶やかで、体躯に似合わぬ高らかな声で、しかも文字で表せない程複雑に、長く囀る。

 ここを訪ねて初めてこの囀りを耳にする人は〝あの美しい声の鳥は何?〟とだいたい尋ねる。全く反応を示さない人もいるにはいるが、余程音感に恵まれていないか、耳が遠いかのいずれかなのだろう。(失礼!)


 動きもちょこまか、ちょこまかと忙(せわ)しなく、一瞬見かけることはあっても、カメラなどで捉(とら)えることがなかなかむずかしい。私見であるが、このミソサザイは日本三鳴鳥のトップに挙げても全くおかしくない。

                                                     

 

 

 私の朝はこの小鳥の囀りと共に始まる。長い間に私の姿に慣れたのか、〝早く起きて!〟と言わんばかりに窓辺の枝に留まり来て、懸命に囀る。

 私だけが辛いの、苦しいのと言っていられない気分になって、気合いを入れてベッドから起き上がるのである。

 野鳥にさえ励まされているのに、私は他の人にいくらかでも励ましを与えられているか、と自分に問いながら生きている。