2022年8月8日月曜日

 コラム281 <山の天気は変わりやすい、というけれど・・・>


 山の天気は変わりやすい、と昔から言われてきたけれど、昨今は里の天気も変わりやすい。二酸化炭素のせいだとも、地軸がずれているのだとも、科学者達は色々言うのだけれど、地球がおかしくなっていることに違いはない。おかしくした元の元を辿れば、きっと人類の生き様(さま)に突き当たる、と私は思う。


 今夏の山の空は、私が山中生活を始めてから約半世紀中、最もヘンテコリンである。

 青空が見え、樹々の間から陽光が差していたかと思うと、急に暗くなり、太陽が暗雲の塊(かたまり)に遮(さえぎ)られ、雷鳴が轟(とどろ)き、突然スコールのような雨が降ってくる。

 ここ数日も、同じような天気が続いている。妙な空だ。妙な天の気だ。


 今日も午後3時頃、デッキに出てアームチェアに腰掛けて陽を浴びようと思っていた矢先、辺りが急に暗くなり、俄に雨の粒が落ちてきた。続いてスコールの孫の様な雨だ。

 午後4時に見えたヘルパーさんと〝また雨ですねえ・・・〟などと言葉を交わしたのも束の間、その雨はものの10分程でピタリと止んだ。そのあと驚きの光景が待っていた。

 紅葉にはまだ早いカツラやソロなどの葉に残った雨滴が、樹間を抜けて突然差してきた夕陽に照らされて、ダイヤモンドのように輝き始めたのだ。七色に変化しながら、キラッ、キラキラッ、と輝くその姿に、私はしばし見蕩(みと)れていた。それはまた夥(おびただ)しい数のホタルが樹々に集結したような光景であった。

 何か奇跡が起きるような予感さえした。特別何も起きはしなかったが私の胸の中は、この雨滴のダイヤモンドの輝きに満たされていた。これこそが奇跡だった。


 雨上がりの林の中にウグイスが鳴いた。

 ウグイスも私と同じ光景を見ていたのだろうか。 (2022年8月1日 記す)