2017年11月27日月曜日

コラム 117  落葉点前  

標高1600メートルの八ヶ岳山中は紅葉の季節も終わり、落葉松のみが黄金色の葉を残すだけとなった。この季節になると風に舞う落葉は雪と見紛うばかりだ。 


先月来た時に壺に投げ入れておいた枝葉が枯れて、床に背を丸めて散っていた。ハラリハラリと散った風情がまたおもしろく、かたづけもせず晩秋の趣のままにしておいた。たまたまその壺の近くに茶ノ湯の風炉が置いてあったから、まわりが落葉につつまれたような格好になった。 

松永耳庵の本を読み耽るうちに、茶でも一服点てようかという気分になった。点前座のこの落葉が邪魔だ・・・・・と、ふとこのままの風情で楽しむのも一興かと茶碗と茶入れをその中に置いた。壺の中には赤いハゼの実が一房残っていた。なかなかの風情であった。私はシュウシュウという松風の中にしばし佇んだ。それだけで十分であった。